2021.08.10

有給生理休暇は男性にとってアンフェアか? 一七〇人の社員アンケートと考える男女平等

 有給生理休暇という制度に、あなたは賛成だろうか、それとも反対だろうか。

 賛否に強い意志を持っているかもしれないし、ちょっと結論を保留したくなるかもしれない。あればめちゃくちゃ助かるという人もいれば、どちらでもいい、無関心だという人もいるだろう。
 こういう場所で書くのは気が引けるけれど、正直なところ、ぼくも昔はまったくの無関心だった。直接関係のない話だし、どっちがいいかもよくわからない。そういうふうに考えていた--というのもちょっと嘘で、そんなことすら考えていなかった。無関心というのはそういう残酷なものだ。

 ちょっと質問を変えてみよう。
 有給生理休暇という制度は、男女平等に資するだろうか。

 こうするとさっきより、女性には客観的な、男性には考えやすい問題になるかもしれない。
 平等が大事だということについて、多くの人は異論を唱えないと思う。でも平等ってどういう状態なのかとか、どういうふうに平等を実現するかとかをそれぞれの人が描いていったとき、たぶん、その像はぴたりとは一致しない。だから、この質問の賛否も割れるだろう。
 男性には生理がないのだからそれでようやくバランスがとれると考える人もいるだろうし、女性にのみ特別な有給休暇を与えられるのがアンバランスだと思う人もいるかもしれない。

 男女平等へはどのように近づいてゆけるだろうか。今日はそんなことを考えたい。

 リブセンスが有給生理休暇をつくったのは、二年前のことだった。経営会議で決議を済ませて全社に告知を流したら、ある女性社員からこんなコメントがついた。

 毎月、痛みに耐えきれず、一日はお休みをいただいていた身としては大変ありがたいなぁと心から思います。
「また有給なくなる」「頑張って会社に行けば有給を申請しなくていいんだ」「辛いけど、痛み止めを二倍飲んで、この痛みに耐えて一旦出社しよう」
 こんなことを思う必要がなくなると思うと感動して涙が出そうです。

 痛みに耐えていた彼女と、痛みのないぼく。二人のあいだに横たわる越えがたい溝を確認した上で、本論に進みたい。

生理休暇について一七〇人の社員アンケートを実施

 今回は有給生理休暇をテーマに、リブセンスの社員に大規模なアンケート調査を行った。聞いたのはこちらの二問。

一 有給生理休暇があることをどう思いますか
二 生理休暇を取れていますか(女性のみ)

 全社に向けて任意・匿名でアンケートを呼びかけ、女性から一〇七人、男性から六三人の回答があった。あわせて一七〇人。全体の四割強の回答率となっている。任意のアンケートでどれだけの回答がくるのか心配していたが、想像以上の数となったことは嬉しい誤算だった。

 はじめに断っておくと、アンケートは任意回答のため、回答は偏っている。どう偏っているかはわからないけれど、内容を見る限りでは「制度により助かっている人」が多く回答した印象を持っていて、それは男女の回答率の違いにも表れている。アンケート結果を何かの参考にする際は、その点を留意していただきたい。

女性は九割が有給生理休暇を評価。心の余裕につながるという声も

 最初の設問は、有給生理休暇の是非について。「非常に良い」「良い」「普通」「良くない」「非常に良くない」の五択で選択してもらった。

 まずは女性から。有給生理休暇を「非常に良い」「良い」と評価したのは実に九割にのぼった。評価する理由の一部をかんたんに分類しながら抜粋する。
 はじめのグループは生理の重さについて語った人たち。休暇が大きな助けになっているようだった。

  • ひどい時は起き上がれないくらい痛いこともあるので、このような制度ができたことはありがたいです。
  • リモートになってから昔より生理痛や貧血で倒れることが多くなり、仕事にならないので一日でも有ると助かります。
  • ほんとに生理がきついので、生理休暇があると助かります。
  • 必ず一日~二日程度、寝ていたいほどの腹痛が生じるため。
  • 横になっていたいほど辛いため単純にありがたい。チーム内でも生理に対する理解があるため遠慮せず取得できる環境にいられていると思う。
  • リモートのせいなのか年齢のせいなのかわからないところですが……毎月ではないのですが、時折動けなくなるぐらいの痛みや貧血になることが増えているので、非常に助かっています。  

 次は年次有給との兼ね合い。冒頭の声にもあったように、年次有給をとるか無理して出社するか、という二択を迫られていた人はとても多いし、泣く泣く年次有給を削っていた人も少なくない。

  • 毎月一回有給で取得すると、他のリフレッシュのための時間としての有給休暇が使えなくなってしまうため。
  • 以前は有給の半分程度が生理の時期に消えていたが、この制度ができてからは本来の有給の使い方ができるようになった。
  • 月一で来る激痛。有給生理休暇ができる前は残りの有給休暇を気にしながら、時には休まず無理して働くという選択をしていましたが、有給休暇の残数を気にせず休暇を取ることができるようになったから。
  • 生理で体がきつい時に、有給の残りを気にせず、有給を使いやすくなった。
  • 制度があることで休暇を取りやすいから。有給生理休暇があることで通常の有給を減らさずに済むから。
  • 入社したてで有給の日数が心もとなかったとき、生理休暇を使えたのがありがたかったです。
  • 体調不良として、ほぼ毎月消化していたので、とても助かる。
  • PMS、生理痛が酷いタイプでリブセンスへ入社する前から毎月一日二日は必ず休んでいました。また、不妊治療も行っているためどんどん有給が減っていくことが精神的につらかったのですが、二〇一九年頃から有給生理休暇が登場してとても助かっています。

 休めて助かるというだけでなく、会社が休暇を用意していること自体が心の余裕につながるという声も多数あった。

  • つらい時にお休みをしてもいいんだという安心感と気持ちの余裕に繋がっている。
  • 生理という仕方のないものに対して、罪悪感を持つことなく休めるのはありがたい。
  • 子供関連で休むことが多いので有給休暇がどんどん減るのですが、「有給生理休暇」があることで「生理しんどいときはこれ使って休める」という心の支えになる。
  • 会社が理解くださっているというだけで安心感がある。
  • 病院では婦人系の病気は無いと診断されつつも、一週間弱続く生理のたび、鎮痛薬を飲んで横になっても耐えるのが苦しいことが多いため、会社が認めているという休みが一日でもあるというだけで心の支えになっています。

 また制度を通じて、生理のイメージが変化したという声もあった。

  • 「有給生理休暇」ができる過程やできたことそのものによって、「生理」に対する興味関心や理解度が進んだと思われるやりとりが社内で見受けられたため。
  • 「生理」とは後ろめたく仄暗く恥ずかしいもの、「生理痛(それに準ずるPMS等の体調不良)」は耐えるもの、という認識でした。生理による有給休暇導入により、「あ、休んで良いんだ」と世界が開いた気がしました。

 寄せられた声のイメージを伝えるため、回答の数に応じて、重複する内容も掲載した。ほんとはすべての回答を紹介したいのだけれど、紙面の都合で以上としたい。
 次に女性の「普通」「良くない」「非常に良くない」の理由を抜粋する。こちらは一挙にご紹介。

  • 休暇としてあるのは良いが、実際のところ取得したことはないから。
  • 自身が生理痛がひどくないので、ありがたみが薄いが、毎月困っている人にはよいんだろうなという感じ。
  • あるのはいいが、生理だからといって休むのが恥ずかしい。
  • あることは大事だけど、なんとなく取りにくい。
  • 人によって、体調不良の重さが違ったりパフォーマンスも変わるクラスのPMSがあります。自分の身体のことを考えて、通常の有給休暇と生理休暇を制度として活用すれば良いだけと捉えています。
  • 月一だと実質年に十二日もの有給付与になり、優遇されすぎている。男性には無いので申し訳ないと感じる。

 そもそも取得する必要が薄い人、取りづらさを感じている人、不公平(男性への申し訳なさ)を感じている人が多かった。こうした課題点については後半の二問目で深く掘り下げていきたい。

女性の九割が支持したのに比べ、男性は何割が支持したか

 次は男性の視点から。
 女性からは概ね好評だろうと事前に予想していたのに対し、男性からの評価はまったく予想がつかなかった。女性のみが受益者となる制度なのだから、「不公平だ」という声もありえる。結果はどうなったか。
 「非常に良い」「良い」を選択したのは、回答者の八割。女性よりわずかに少ないものの、とても多くの男性が有給生理休暇を評価した。多少の回答者の偏りは想定されるにせよ、八割もの人が支持したことはとても重要な結果だろう。

 以下に賛同の理由を抜粋する。利用当事者ではないゆえか、多角的な視点があがったことは興味深かった。
 まずは身近な人を見ていて、その重要性に気づいたという意見から。

  • 妻が非常に辛そうにしているのをみているから。個人差があるとはいえ、本人でどうしようもない部分なので休暇としてあるのは良いと思う。
  • 嫁さんを見ていてその辛さが少しわかる気がするため。
  • 妻が大変そうな様子を実際に見ているので。
  • 自分の彼女が生理痛重い人だということもあり、何もしてあげられないもどかしさを感じているので、そこを社会としてサポートするというのは基本的に賛成。
  • 男性には辛さは想像しかできないが、今までとてもしんどそうな女性を多く見てきたので、性別の特徴に合わせて休みがあるのはとても良いと思います。  

 お次は、そもそも体調が悪いときは休んだ方がいいとする意見。

  • 体調が悪いときは休むべきだと思います。生理は本人の意志と関係なく訪れるので、有給とは別で各々に合わせて使用できると良さそうだなと思いました。
  • しんどいときは休みやすい文化を形成する一助になると思うため。
  • 本人が体調辛い中業務を行っても苦でしかないし、会社としても生産性高い業務を行ってもらう必要や、安全配慮義務の観点から必要だと思う。

 そして平等・公平に触れた意見も多数あがった。

  • 性差を考えた上での公平さだと感じたから。
  • 回避不能な体調不良(重い方は相当しんどい)に対し、女性だけが有給を使ってしまう事態になるので、特別休暇を付与することで、男性と女性が平等に正しく有給を消化できるのでよいと思います。
  • 性別の違いにより、パフォーマンスを発揮できる環境に違いがあるのは企業のみならず、社会として改善すべきポイントだと感じます。そして、女性特有の生理現象において、女性が使用可能な有給生理休暇を整備することは平等性が確保できていると考えます。
  • 制度設計としてそこに対応していくのは非常にまっとうに感じる。身体的な性別を選んで生まれてくることはできないので、公平性の問題も大きくないのではないか。強いて言えば男性側の生理への理解がないと不公平感が生まれるのだろうが、そこは制度というよりも啓発で解決すべき問題であるように思う。

 事前にはまったく想像していなかったが、採用力・企業の魅力という観点でも複数の声があった。

  • 従業員にとって働きやすい環境になるから。採用のしやすさや帰属意識にもつながりそうだと思うから。
  • 有給生理休暇を認めることで女性の採用にプラス効果などがあるなら、あった方がいいんじゃないでしょうか。
  • ブランディング的に「良い」印象(実際、社風を伝える際の具体例として紹介することもある)。

 また自分にはわからないからこそ、当事者に判断を委ねるという声も。

  • 男にはわからない世界。女性に委ねよう。

 「助かる」という声がなくなったかわりに、男性からは「公平性」や「採用」や「文化」に言及する声があがった。また身近な人を見て、その辛さがわかったという声も複数あった。ふだんなかなか生理の話題に触れる機会の少ない男性だからこそ、身近な人が理解の糸口になっているようだ。

 男性からの反対や、評価を保留する声も紹介しておきたい。まずは圧倒的に多かった「線引き」の問題。この方々は基本的には「休める制度には賛成」という立場。

  • その他の身体的・精神的不調(インフルエンザ・持病・天気痛など)をどこまでカバーするのか、その線引きが難しい。
  • 基本的に体調不良ないしは、それに準じた時は休むべきだと思うので、生理休暇に限らず傷病休暇的なのを期待したい(なので、意見的にはニュートラルです)。
  • 特に賛成も反対も感じない。生理が重い人がいるのは聞いたことがあるし、それを会社としてサポートするのは悪いことではないと思う。ただ「生まれつき生理が重い人がいる」ということを会社としてサポートするなら、「生まれつき熱を出しがちな人がいる」ことも会社としてサポートするのは自然だと考えるので、個人的には生理休暇よりは sick leave を認めるべきだと考えている。
  • 従業員/求職者などから女性への配慮がある会社だという理解は得られるが、体調が良くないことは性別問わず発生するものであるし、休暇承認者が男性だと申請しにくさを感じる女性も一定数いそう。休暇を取れるようにするのは賛成だが、あえて「生理休暇」とする意味はないと思う。

 その他の意見は以下の通り。

  • 評価できるほど理解していると思えないため。
  • マネジメントの難易度が上がる(ズル休み、異性/同性からのやっかみなど)。
  • 体調不良なら男性もあると思う。
  • 制度としては良いと思うのですが、利用している方が少なそうなのでどちらでも良いのかなと思います。

 反対意見のなかで多かったのは「有給生理休暇よりも有給傷病休暇(シックリーブ)が望ましい」という声である。確かに心身不調は生理だけではないし、女性だけの話でもない。
 生理だけをことさらに取り上げて制度化するのは、女性贔屓で不公平なのだろうか。

有給生理休暇とシックリーブの比較。生理のみを優遇する合理性はあるのか

 こうした疑問に答えるため、そもそも有給生理休暇を制定した背景について触れておきたい。
 誤解を恐れずにいえば、有給生理休暇を導入したのは「生理がつらいから」ではない。つらいことなら、確かに他にもたくさんある。
 骨折も、失恋も、インフルエンザもつらいし、二日酔いや低気圧だってつらい。つらいことをすべて有給休暇にしていては、企業は立ち行かなくなってしまうし、そこには新たな不平等さえ生まれるだろう。つらさを比較して、より大きなつらさのみを休暇にしようなんて言い出せば、変なルールと統制が蔓延するのは目に見えている。そういう道には進みたくない。

 それでは「生まれついての性質」とか「本人に帰責できないもの」だけを対象にすればいいのか。それもやっぱり難しい。そういった要因は〝多少は〟考慮されるべきだろうが、どこまでを本人に帰責できるかなんて、そもそも一企業に判定しようがない。コロナの感染がどこまで本人の不注意なのか、実証しようがないのと同じだ。

 なぜ有給生理休暇を作ったのか。それは本制度が男女平等を実現するための有効な手立てだからだ。
 仮にここに一人の生理が重い女性がいるとしよう。彼女の勤める会社には有給生理休暇がなく、月に一日は年次有給を生理のために使わなければいけないとする(そういう人が実際に多く存在することは、アンケートで見た通りだ)。年に十二日の有給休暇が心身の不調によって恒常的に削られるとしたら、それは休暇日数の不平等といえるだろう。

 そういう問題を引き起こすのは生理だけではない、という主張は当たっている。定期的に不調が訪れる障害・疾患・体質などで、同様の不平等が存在しているという指摘もその通りだ。

 シックリーブがあればすべて解決するのだろうか。なるほどシックリーブは理想的に見える。いかなる持病や疾患もカバーすることができる。その事由は問われない。それが生理だろうが持病だろうが、内容を問わずに適用することができる。しかし果たして「事由を問わない」ことは「平等」に資するのだろうか。
 先ほどの女性の会社にシックリーブが年に十二日付与されたとしよう。その後の運用をよく想像してみると、事態は年次有給が削られているときとほとんど変わらないことに気づくはずだ。
 彼女だけシックリーブが丸々削られ、他の人には病欠する余裕がある。他の人は病気になったときにシックリーブを使えるが、彼女は年次有給を使うはめになるだろう。

 平等に休暇を与えれば、不平等はそっくりそのまま温存される。
 このことはあらゆる構造的差別への対応に当てはまる。不平等が既に蔓延っている社会の中で、有利なグループと不利なグループを対等に扱うことは、なんら平等に与さない。
 これが生理休暇をシックリーブに置き換える策の問題点である。

 シックリーブを使った解決策が全くないわけではない。それは全員に使いきれないほどのシックリーブを与えることだ。年に三十日、四十日もの(もしくは無制限の)シックリーブを与えれば、ほとんどの身体的差異を吸収することができるだろう。それができる会社は、そうすればいい(実際そういう会社も増えていくだろう)。
 しかし多くの会社では、また別の問題を生み出してしまう。自分が健康に気をつけて生活し仕事している隣で、不養生な同僚が何十日も有給で休んでいるとすれば、そこに耐えられる人はそう多くないはずだ。

 一部のグループに仕立てられた休暇は、一見すると贔屓をしているように見えるかもしれない。生理の休暇、犯罪被害者のための休暇、不妊治療の休暇、性別適合手術の休暇。連ねればきりがないし、他にもまだまだ考慮すべき事情はある。特別休暇を作ることは、一部の人たちの事情をさしおき、ある人たちの事情を特別扱いすることである。そう言われれば、否定はできない。

 しかし実際のところ、残された道はほとんどそれしかないのである。不平等だろうか。そうかもしれない。でも不平等は元からあったのだ。それを無視することも、一律にシックリーブを用意することも、どちらも平等へは近づいていない。個別の特別休暇はそれに比べれば、いくぶんマシな選択である。
 わたしたちが行動する際に問うべきは、「パーフェクトに平等か」ではなく「平等に近づいているか」でしかありえないのだから。

メンズ生理なるものは本当に存在するのか

 今回のアンケートでは出てこなかったが、稀に聞くことのある「男性にも生理がある」という意見についても、ごくごく軽く触れておきたい。

 一部のブログやネットニュース、インフルエンサーのあいだで「男性にも生理周期がある」と書かれることがある。「メンズ生理」や「睾丸周期」などと呼ばれている。男性の身体にも生理周期があり心身の不安定が周期的に訪れるという言説であるが、こちらはまったく医学的根拠がないものである。

 詳細はBuzzFeedが男性不妊症と性機能を専門とする泌尿器科准教授の小堀善友氏にインタビューした記事に詳しいので、そちらに譲りたい。
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/mens-period-dr-kobori

 むろんここで言いたいのは「メンズ生理が存在しない」というだけであって、「すべての男性に周期的な不調が存在しない」というわけではない。わたしたちの心身は生活習慣、天候、家庭、仕事など、さまざまな外部要因の影響をつねに受け、ときに不調や痛みといった形でそのサインを出す。
 もし周期的に不調に見舞われるならば、メンズ生理のせいにして片付けるのではなく、しっかり医療機関を受診してほしい。

生理休暇を取れているのは約半数。生理休暇の取りづらさの正体

 気を取り直して二問目は、有給生理休暇の取りやすさについて。
 「取得している」「取得したいが、できていない」「取得する必要がない」「その他」の四択とし、女性のみが回答した。結果は以下の通りである。

  • 取得している 五〇%
  • 取得したいが、できていない 二七%
  • 取得する必要がない 一四%
  • その他 九%

 「取得している」が半数、そして三割が「取得したいが、できていない」となった。取得が必要だという人に限れば取得率は六五%となる。

 「取得したいが、できていない」人にその理由を聞いた。こちらも多様な理由があがっている。
 まずは当日いきなりは休みづらいというもの。

  • 生理による急な体調不良が起きても、スケジュール的に当日休みにくい。
  • 「生理」は見立てが立てづらく数日前後する予定という特性があるため、当日の突発的な休暇申請となり、各種スケジュール調整の申し訳なさによる心理的負担が発生するため。
  • 毎月のように当日欠勤をしてしまうのが申し訳ない。
  • いつ生理が来るかわからず、来たときにはミーティングや社外打ち合わせが入っており、急に休むのが難しいため。
  • 当日の朝に具合が悪い状態がわかっても、予定が詰まっているので休みづらい。

 次に不調のピークを予想するのが難しいというもの。

  • わざわざ有給生理休暇を取得する場合には、生理日の数日のうち体調の悪さがピークの日でなければならないという勝手な思い込みが発生していている。ピンポイントでその一日を休む選択ができなかった場合はその月の生理休暇の取得を諦めてしまう。
  • もっとも体調が悪い日を事前に予測することが難しい。当日突然休むのは、生理に限らずそもそもとても難しい。  

 重い人と比較してしまって、我慢してしまうという方々もいた。

  • 生理痛で休むことに抵抗がある。あと生理痛がひどい人に比べると自分は薬を飲めば耐えられる方なので取りづらい。
  • 自分の場合は我慢できるレベルなのでいいかな?と思って毎回忘れてしまう。
  • 取得するほどの症状じゃないかなと自己判断してしまうため。

 そして上司が男性だと申請しづらいというもの。

  • 生理なのでお休みくださいと言いにくい。上長・またグループの方が全員男性なので伝えにくかったり、OKをもらったとしてもどう思われるかモヤモヤが少し残ってしまうなと思ってます。
  • 上長が男性で言いづらい、かつ、「事業部のメンバーに理由を濁しながら休むくらいなら…」と思って我慢してしまうため。
  • あるとありがたいと思いつつ、これまでの会社員人生で一度も取得したことがない。上司が男性の場合が多いのでなんとなく申請しづらく、普通の有給で対応していたところがある。若い人はもっと普通に取れればいいなとは思っている。  

 上司の性別に関わらず生理休暇は取りづらいという声もあった。

  • 生理を理由に休みづらいので、腹痛がひどいといって普通の有給を使っている。
  • 上司の性別関係なく、個人的に昔から「セイリ」という音・響きが好きではなく、「生理は恥ずべきものでもなんでもない!」という気持ちがある一方で、実際申請するとなると少し躊躇するかもしれない。
  • 今まで休んでいなかったものを休む、というのがなんとなく言いにくい。
  • 一般的な体調不良と異なり、今まで我慢してきた分、休まなくても最悪なんとかなると思っているため。

 さいごに他に取っている人がいないから、というもの。

  • あまり取得している人がいないし、申請しにくい。
  • 他にとってる人の事例を聞くことがない。

 ここまで見てきたように、実際には生理休暇を取っている人は多数いる。オープンに語られることがあまりないがゆえに、実際より取得も少なく見えてしまうのが現状だろう。今回の調査が取りやすさを向上させる一助になればさいわいである。
 それにしても、生理休暇は他の休暇に比べてやっぱり取りづらいようだ。この問題について引き続き考えたい。

生理休暇の名称問題。生理をタブー視しないこと

 そもそも生理休暇という名前を使うべきではないという意見もある。
 制度の策定時にも社内でそういう懸念はあがったし、今回のアンケートでも名称について言及した声はあった。
 たとえばサイバーエージェント社では女性の休暇をすべて「エフ休」と名付け、取得したのが年次有給か生理休暇かわからないようになっている。そうすれば上司が男性だろうと構わずに休暇を申請できる。取りやすさに配慮した工夫だ。
 しかしわたしたちはそういった議論や巧手があることを承知の上で、男女社員あわせた話し合いの末に、生理休暇という名称を避けないことにした。これ以上生理を「隠すべきもの」にしないほうがよいと思ったからだ。

 もし生理休暇の取得を理由に男性上司から不当な評価を受けるなら、それは大きな問題だ。上司のスタンスが見えなくて怖いという人も多くいる。
 しかし会社が公式に用意している休暇の利用を理由にして、嫌がらせや不当評価が起きたなら、それは立派なパワー・ハラスメントである。暴力が起きたとき、行動の修正を求められるべきは加害者の側であって、被害者ではない。

 先のアンケート回答にもあったように、生理を「後ろめたいもの」「恥ずかしいもの」と思っている人は少なくない。べつにそんなことはないと頭ではわかっていても、なかなか意識は変われない。企業が生理を「隠すべきもの」として扱うことは、そうしたイメージを助長する危険性を孕んでいる。
 むろん誰彼かまわずに大っぴらにしようという話ではない。それぞれの身体事情はプライベートな領域であり、無闇に他人が踏み入っていい事柄ではない。企業側も制度設計にあたっては配慮が求められる。
 とはいえ制度だって一度作って終わりではない。改善や運営の議論も、男女を交えてフラットに行なっていく必要がある。生理をタブー化しては、健全な議論は起こり得ない。

 リブセンスが有給生理休暇を施行した後、ある女性社員が「有給生理休暇を使ってみた」という社内ドキュメントを作り、取得した感想を社内に公開していた。そこには率直な実感が綴られ、最後はこんな言葉で締められている。

言いたいけど言えない人、この忙しい時期に上司にはちょっと伝えづらい人、これで休むのは気まずい…なんて思わなくていいのです。だって痛いもん。使い方は自由!自分の体調が分かるのは自分だけ。まずは申請してみましょ!

 そのページには男性社員から「こういう投稿を公開していただけることはとてもありがたいし、男性にも大きな意義があります」「この記事が社内で普通に公開されてることがすごい」といったコメントがついていた。

 有給生理休暇があることが、すぐに男女平等へとつながるわけではない。仮に生理休暇の名称を伏せ、女性が自由に休暇をとれていたとしても、男性が「女性は多く休めてズルい」「不公平だ」と思っているのであれば、その会社ではやはり平等は実現されないだろう。
 目指すべき地点は休暇が取りやすいだけでなく、生理への誤解も偏見もない状態である。この社会もわたしたちもまだまだ道半ばだが、今回のエントリが少しでも理解を助けるものになればさいわいである。

執筆 桂大介

会社を経営したことで社会の定型に違和感を覚え、教育や経済のオルタナティブに関心を持つ。リブセンスでは企業の在り方を再考する経営デザインプロジェクトを担当。人事制度の提言や研修「常識を考え直すワークショップ」の企画を行っている。趣味はアルコールとファッション。

編集後記